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福岡大会 報告その2
大村はま記念国語教育の会研究大会
         【福岡大会】

〔研究2〕
「大村はま先生」をどう伝え受け継ぐか   

      鳴門教育大学 村井万里子

 私は発表題目を「大村はまを学ぶ基礎としての芦田恵之助及び言語理論―『綴方教授』及び朗読と『対話環』―」とした。これは大学で教員養成にたずさわるなかで20年来一貫して追究してきたことのエッセンスである。エッセンスには違いないが、熱心なすばらしい具体事象が次々に披瀝されるにちがいないこの研究会では、私の生中(なまなか)な「理論のことば」は浮いてしまうとわかっていた。窮しながらしかし資料二枚目までに書名を列挙した九冊の本を読み返しているうちに不思議な充実感を覚え、「ふるさとに帰ってお湯につかっているような温かい気持ち」になってきた。このことに驚きまた安堵し、客観的には準備が進んでいないのに、“よい発表ができる”と、根拠のない確信が湧いてきたのである。
 こうした結果、当日はとんでもない冒険をした。苅谷さんの発表が進んでいる間に次々にわき上がってきた「本当に話したいこと」を手元の小さな手帳に書き上げてその場で構成して話したのである。けれど資料を見てくださっていた聞き手にとっては一種の肩すかしである。二度としません、できません。お許しください。

 用意した発表資料のなかで部分的にであるが当日使えたのは、最終ページ「大村はまが芦田恵之助から受け継いだもの」九項目である。少し簡略にして再掲する。

①同一の到達点を一斉に目指すのでなく、一人一人の全力発揮をめざす(苅谷さんが『評伝』で強調された「ひたすら」である)。その基礎は「作文指導(綴り方)」にある。
②個によって集団を育て、集団によって個を育てる。交流(対話)を基本とする学習。
③子どもの興味関心を「意図的に」呼び起こして、学びを主体的にする。主体的な学びの
 過程のなかで「機を見て支援」する。
④子ども自身の伸びる力による「自然な指導系統」を開発・発見し、「発達の先回り」を
 する効果的な「迎える指導」を切りひらいた。(「手を引く」=てびき)
⑤言語活動(言語行為)のなかで「ことばの力」をみがく。機械的反復学習をしない。
⑥子どもと教師は「学ぶ仲間、研究仲間」(同志)である。
⑦教育話法の決め手は「間」にある。「間」によって考えさせる。
⑧教師による「音読・朗読」は、子どもにとっての第一教材である。みごとな「着語」。
⑨「書くこと」に修養を見いだし「自己学習力」を鍛え上げる。(「筆まめ」の精神)

 これら九項目すべてに共通しているものを表すのに、私は山口喜一郎の提案した「対話モデル」(1943)を「対話環」と名付けて使っている。その精神は、「マニュアルなぞり」の対極にある。「学んだことは三つあります」と言い始めて二つめが出なくなった小学生を追いかけて「すばらしいですよ」と褒めた大村はま先生は「型通り」のお礼でなく自分の言葉を話そうとした女の子の勇気に対して最高の賛辞を与えられたのだと思う。

 私(村井)が高校生にした話のあと、「謝辞」を述べてくれた男子生徒は残念ながら「用意した型通り」の挨拶だった。けれど1ヶ月後12月22日に高校から送られてきた「生徒の感想」には、「大震災で住民の命を救った“型通りでない町長さんの避難命令”の話がよくわかった。自分も型通りでない話をしたい」と述べた女子生徒の言葉があり、「この子には伝わった」と胸が熱くなった。「あ、顔が上がってきた」とその場で感じた手応えは、やはり裏切られなかった。「対話環」は、つながる瞬間を象徴するモデルなのである。
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by ohmurakokugo | 2012-06-14 17:30
  

大村はま記念国語教育の会のネット版会報。国語教師・大村はまについて、知り、考え、試し、自分の力にしたいと集まった会。ご入会を歓迎します。お問い合わせは hokokugo@gmail.com まで。
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