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イギリスで語られた大村はま
イギリスで語られる大村はま 3
                                               苅谷 夏子
 10月のロンドンは、陽の射さない日はほとんど東京の冬と変わらない寒さとなる。足もとを舞う枯れ葉も湿りがちで、これからの冬の暗さが思われる。かつて漱石を鬱屈させた暗さである。
しかし、この10月6日の土曜日は、まるで贈り物のような秋の陽光に恵まれ、空は真っ青で、ぬくぬくと明るい一日となった。この日、放課後のロンドン補習授業校アクトン校舎を会場に、「英国大村はま勉強会」が開かれた。組織化、定例化を目指したものとしては、第一回の発足の会である。集まったのは、補習校で国語を教える教員、大学で日本語を教える教員など23人。昨年秋に英国日本語教育学会に招かれて、大村先生の実践と思想についてお話をしたことをきっかけとして、少しずつ輪が広がっていき、この日を迎えることができた。
 集まったのは、異国における国語教育、日本語教育でそれぞれの困難と課題、問題意識を持った方々だ。
ロンドン補習授業校(3つの校舎に分かれている)には、1000人を超える児童・生徒が通っている。企業の駐在員の子女や国際結婚の家庭の子どもたちなどで、国語力も、家庭の事情も学校への期待も、差が非常に大きい。その上、年40日ほど土曜日の午前中のみの授業だ。そういう大きな制約にもかかわらず、日本から取り寄せた国語教科書を最後まで終えることが求められる。いったい何をどう選択し、教えていけばいいのか、どういう教室を目指すべきなのか、個人差にどう応じていけばいいのか、そうした本気の問いを持って、大村はま先生を知りたいと、集まった。
 補習校アクトン校舎のMさんは、しばらく前から大村先生の著書で勉強し、工夫して「作文に添える先生への手紙」「グループ学習」などをすでにご自分の教室で試み、それまでにはなかった成果を感じているという。もっともっと大村先生から学べるはず、と考えておいでだ。補習校フィンチリー校舎のMさんは、今年春の苅谷の講演を聞いて以来、ご自分の教室での話しことばに強く意識を向けることを実行なさっている。それだけでも何かが変わった感じがすると述べられた。
 日本語教育の分野から参加くださって、勉強会の発足に力を貸してくださっているのは、オックスフォード・ブルックス大学のAさんだ。これまで、国語教育と日本語教育は必ずしも十分な交流を持たないまま、別個のものとしてやってきていたが、境界を越えて、教える仕事の基本、知恵や実践のやりとりをすることの意義深さを語り、大きな期待感を表明なさった。
 苅谷は、現地の事情も踏まえ、ことばへの関心を高め、語彙を増やし、言語感覚をみがいていくための、大村教室スタイルの小さな「ことばの勉強会」の実例をいくつも紹介した。大村先生は、語彙の指導は「得意中の得意」と言っていた。自身が好きだっただけでなく、生徒も楽しみにした。大きな構想の本格的単元が成功した裏には、日常の中に散発的に置かれたこの小さな「ことばの勉強会」が育んだ土壌が、重要な素地となっていたと感じる。5分、10分という時間でも、ことばの感覚は磨くことができる。そういう場面では、先生が(時には生徒も)自ら採取した実生活の中の教材が活きていた。ことばへのふさわしい素地を育てることは、かなり優先順位の高いことだろうと思われる。
後半は、会場から質問を受け、読書生活指導について、教科書(特に文学教材)の扱いについて、個人差への対応などがテーマとなった。
 参加者から「今日一日だけで、たくさんのヒントを得た。資料が、書き込みでいっぱいです」「ことばを育てる仕事の本来に立ち戻れた気がする。明るい気持ちになった」「具体的な目標を立てながら、進んでいきたい。次回が楽しみ」などという声が聞かれたことは、嬉しい成果だった。次は来年春を予定している。
この「英国大村はま勉強会」は、大村はま記念国語教育の会のイギリス支部という位置づけで、やっていこうとしている。正式な会員登録などはこれからだが、少なくとも、元気な産声が上がったことは、確かなようだ。 

12月1日(土)は千葉大会。詳細は前ページに
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by ohmurakokugo | 2012-11-14 08:57
  

大村はま記念国語教育の会のネット版会報。国語教師・大村はまについて、知り、考え、試し、自分の力にしたいと集まった会。ご入会を歓迎します。お問い合わせは hokokugo@gmail.com まで。
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