捨て身
 …この「献身」とか「捨て身」とか、こういう言葉は、別の言葉に言い換えるということで教えることができないと思います。・・・どういうことなのか、体験の感じでのみこませたいのです。大げさな言葉で言いますと、ひとつの言葉がしっかりと身に付くということは、ひとつの人生を開いたようなものではないかと思ったのです。

                              『授業を創る』 国土社より

 大村はま先生が、戦後の混乱期に、産声を上げたばかりの新制中学校に自ら飛び込んだのは、「捨て身」といっていいくらいの気持ちだった、と後に語っている。敗戦、占領、戦争への悔い、民主主義への希望、子どもたちへ託す気持ち、それらを思ったときに、「捨て身」と表現するほどのせっぱ詰まった思いで、新しい教育にかけた。

 そういう時に使われた「捨て身」というようなことばを、辞書的に、「身を捨てるような気持ちで、全力を出して事にあたること」(大辞林)などと言い換えれば、わかったことになるのか。飲み込ませることができるのか。このことばをうまく使った短文が作れたら、それで合格か。

 大村はまは、ちがう、という。こういう重い概念こそ、「体験の感じでのみこませたい」「ひとつの人生を開いた」ような深さにおいて、わからせたい、という。
 だから、たった一つのことばを飲み込ませるためだけに、一つの物語と出会わせたりしていた。そうやって出会ったことばは、忘れるも、忘れないもない、一生のもちものになる。
 そんなふうにことばを育てていた大村はまにとって、国語教師の仕事は、「捨て身」になるだけの甲斐のある、大事な、また楽しい仕事だった。

 大震災後の今、きっとさまざまな場所で、捨て身で働いている人がいるだろう。無我夢中で、前のめりで、自分のことを計算に入れることも忘れて、目の前の仕事に没頭しきっている人たちが、きっと世の中をじりっと前に進めるのだろう。
 その姿を子どもに指し示して、「あれが『捨て身』だ。あの姿を『献身』というのだ」と教えてやりたい。

 被災地の先生方に大村はまの本を届けよう!  
 私たちは、教えることを仕事とする人たちを励まし、勇気づけ、叱り、誇りの原点を示す大村はまの著書を送る活動をしています。ご賛同いただける方は、下記の郵便振替口座までご寄付をお願いします。
00390-5-17826 
大村はま記念国語教育の会  


お問い合わせは大村はま記念国語教育の会事務局 hokokugo@gmail.com までお気軽に!
[PR]
by ohmurakokugo | 2011-06-02 17:56

大村はま記念国語教育の会のネット版会報。国語教師・大村はまについて、知り、考え、試し、自分の力にしたいと集まった会。ご入会を歓迎します。お問い合わせは hokokugo@gmail.com まで。
by ohmurakokugo
プロフィールを見る
画像一覧
カテゴリ
全体
未分類
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
ブログパーツ
ファン
ブログジャンル
画像一覧