埼玉大会の実践研究発表 その2
埼玉大会で発表された三つの実践研究のふたつめ、中学校での実践を報告する。この日、午前中に千葉大学の寺井正憲教授が、エディターシップという切り口から大村はまの実践を捉え直す研究をご発表くださった。ここで福田さんが今回着目なさったのも、情報をただ受け取るだけでなく、編集して出す、という取り組みで、論理的思考力を育てようという試みだった。

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研究テーマ 実生活で生きてはたらく言語能力の育成を目指して
~ 論理的思考力を育む学習指導の工夫 ―情報を編集して伝える― ~ 
埼玉大学教育学部附属中学校 福 田 隆 賢


 私達は日々膨大な量の情報に囲まれているが、得た情報はすべて誰かによって編集されている。それは情報を受ける我々をひきつけるためであったり、重大性を強調するためであったりする。生徒達は膨大な量の情報に出会っているが、その情報が誰かによって編集されているという意識は低い。ここでは小・中学生向けに作られた雑誌を題材に、情報を分かりやすく伝えるための工夫―タイトルや小見出しの付け方、文章構成、レイアウトの工夫、文章以外の情報の捕捉など―について学習した後で、「文章を雑誌記事へと編集する活動」を通して情報を効果的に活用することとはどういうことかを理解させる。そのうえでその力を高めていきたいと考えた。

 生徒達は、説明的文章は難しい、書いてあることを理解するのに時間がかかる、面倒だという。そこで思い出したのが「文章で記述されている内容を自分なりに図解してみる」という、「新聞勉強術」という本の中の一節だった。図解をするために「知らなくてはいけない部分を見つけて整理すること」は、「内容を分かりやすく理解すること」につながっていく。また、「表現(図解)することを考えること」は「相手意識をもって伝えることの大切さを実感できること」につながっていくと考えた。そのことが今回の単元を考えた原因になっている。

 単元の目標は①すすんで情報を整理しようとする、②適切な情報を得て、それを理解し、自分の考えをまとめることができる、③対象や目的に応じて文章の形態や展開に違いがあることを理解できる、である。

 指導は4時間扱い。1時間目は学習の流れを知り、見通しを持つ―「情報はどのように編集されて雑誌に掲載されているか」について考えた。まず「編集」を意識するために雑誌の前に新聞の比べ読みを、―第一時間目の授業の前日が中日ドラゴンズが日本シリーズを決めた日でした―、スポーツ紙、各一般紙を持ってきて捉え方の違いについて確認した。その後、雑誌から選んだ記事、「日本の食料自給率の減少について」を文字だけにして、生徒に配布。読みながら、この辺は具体的なデータになるとか、この辺はこの文章の最も言いたいところではないか、などというところを確認した。その上で、もとになっている実際の雑誌の記事を読み、情報の見せ方の工夫について確認した。編集することで最も伝えたいことはどのような形になっているか。問いの形になってタイトルになっていたり、あるいはその答えは見出しとして解説文の前に表示されたりしている。図表やグラフや写真などが挿入されていることもある。また分かりにくい専門用語はどのように扱われているか、そしてレイアウトがどのように工夫されているかということについて考えました。

 2時間目には雑誌「ジュニアエラ」のその他のいくつかの記事を配布して、どこに工夫が感じられるかどんな点が魅力になっているかグループで探し出す活動を行った。生徒は主にビジュアル面の工夫に着目して、グラフや図の効果的な活用や写真、キャラクターが生かされているなどに着目していた。

 3,4時間目には、編集会議で雑誌の紙面構成を考えるという学習活動を展開した。一時間目と同じように文字だけで表された文章を配布し、それをまず個人で紙面を考え、その後グループで検討するという活動を行った。グループで一つの記事を作成するということで、役割を決め、編集長が進行役となり、記録係がアイデアをまとめるということで、付箋等を使いながらまとめた。まず伝えたいことは何かを捉え、根拠は何か、データやその他の資料となるものを考える。レイアウトをどのようにすれば、見やすく分かりやすくなり、速く読むときに効果的かということを考えた。ここで強調したのは読み手、読者をしっかり意識すること。ざっとしたレイアウトと見出しなどを考えるところまでで終わり、細かい文字まで入れることをしなかったが、ただ項目を羅列したような個人の案に対して、検討を経たグループ案はタイトルを工夫したり、内容によって分けたり、ここにグラフが入るかいう予測を立てたりしたものになった。

 グループ案を最終的に完成した上で、最後にもとになった実際の雑誌の記事と並べて、写真や図表、文章との関連、役割、レイアウトなどについて考えたことをまとめさせた。自分たちのレイアウトしたものとプロの編集者が作ったものとを比較し、気づいたことを発表した。視線の流れやタイトルをつける工夫について気づく生徒も出た。

 生徒たちは意欲的に学習に取り組みんだが、雑誌というメディアの特徴のうち写真、グラフ、イラスト等の視覚的なものを「分かりやすく伝える工夫」と捉えるものが多かった。情報を効果的に活用することがイコール単純化することでないことは、授業内で確認できたが、情報活用については今後多くの実践を積み重ねて、論理的思考力を育む指導に適しているかということを検証していく必要があると考える。
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by ohmurakokugo | 2010-12-17 21:05

大村はま記念国語教育の会のネット版会報。国語教師・大村はまについて、知り、考え、試し、自分の力にしたいと集まった会。ご入会を歓迎します。お問い合わせは hokokugo@gmail.com まで。
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