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実践研究発表へのコメントと指導 
引き続き、埼玉大会から。
実践研究発表の一つめは、三俣小学校の江利川哲也教諭の「浮野の里」のガイドブック作りの単元だった(既報)。今回は、その発表に対してのフロアからの発言と、桑原隆・早稲田大学教授のご指導を紹介する。


藤井先生(岩手大学教育学部) 
 小学校の実践は、地域教材を学習材化したことで、単元としては大変面白い内容だということには敬服したが、単元学習を一般の先生達に深く理解していただける点において難しさがある。
 一つの単元の中で、ガイドブックや内容の作り方や調べる方法を学ぶということで時間を取っている。今までの既習の学習においてつけてきた言語能力に負わず、ここの部分で時間を食っているから内容の検討部分が手薄になってしまう。先日、全国大学国語教育学会の発表で、大村先生は意見文をたった四時間で書き上げさせているが、そのためには、それまでの綿密なカリキュラムの構成にあったという発表があった。そういうことがカリキュラムの問題と絡めて単元提示されると、先生たちはなるほどこのように仕組まれているのかということで納得してもらえるのではないか。そうでないと素材の面白さで、単元の理解がとどまってしまうのではないかということが惜しいという感想を持った。

指導・桑原 隆 早稲田大学教授

 江利川先生の今日の提案は、学校近くの浮野の里というローカルな視点を元にした単元。こういうローカルな視点は、もっとこれから単元を発掘できるのではないか。教科書には盛り込めないので、その地域のローカルなトピックや資料を発掘してほしい。
江利川さんの単元の特徴は、苅谷さんから手紙が来たという一つの演出的な単元設定かもしれない。子供がそれをきっかけに学習意欲を喚起され学習に進んでいったという学習の実の場作りの一つだろう。かなり子供達が、それに応えようとして浮野の里を調べたということで、実の場の一つの作り方を示唆している。
 子供達は自然科学的な分野はだいたい目に留まる。社会科学的分野にも少しずつ関心が向く。ところが人文科学的分野は、なかなか子供のほうからは興味関心、話題が聞いても浮かんでこない。したがってそのへんは先生から誘ってあげる必要がある。その一例をいえば、例えば浮野の里や埼玉県の地方に伝わる民話や昔話、伝説も教材にしてほしい。
学習過程の中で地域の人へのインタビューも取り入れている。出来上がった作品を苅谷さんに渡したり、他地域の小学生に送って読んでもらう報告もあった。一つの教室の中だけでなく、地域に住む人、年齢を超えた人との出会いやコミュニケーション、更には他の地域の小学生とのコミュニケーション、これは私自身の造語で「異間コミュニケーション」と呼んでいる。そういうものがこれからの国語教室、あるいは言葉の力を伸ばす上で必要だろう。その点、ガイドブックの単元の中でインタビューを取り入れて、その仕方なども指導していることは共感した。

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by ohmurakokugo | 2010-12-15 21:16

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